こんにちは,実はワイン大好きタイの晩ごはんです。
日本では良く飲んでいたワインですが,バンコクに引っ越してからはまだ一度もいただいていません。
理由としてはまず第一に暑いこと。
白ワインやスパークリングなら良いんですが,赤ワイン好きとしては日中の気温が40℃近くにもなるタイで赤ワインはちょっと食指が伸びません。
もう一つの,そして最大の理由が値段です。
輸入物になるワインの関税はとても高いらしく(正確な数字は分かりませんが),日本で同程度のワインを買うよりも割高になってしまうんです。
例えばこちら。
買い物に行ったスーパーのワイン売り場です。
真ん中にならんでいるのが,日本でも売られているコンチャイトロ社の『カッシェロ デル ディアブロ』というワイン。
「悪魔のセラー」の異名を持つコンチャ・イ・トロはチリのワイナリーで,しっかりとしたボディに溢れるような果実感,スパイシーさを兼ね揃えたこのワインは日本で買うと1500円前後というコスパの良さで僕も大好きなんですが,こちらの値札を見ると679B。日本円だと2172円ほどになります。
ちょっと高いですよねぇ。
別のワインも見てみましょう。
これも日本で良く見ますね。オーストラリアのワインセラーが出す『BIN』シリーズ。
葡萄の品種ごとに数字が振り分けられていて,シラーズなら『BIN555』,メルローなら『BIN999』といった具合。特にシラーズはコスパも抜群でお薦めのワインですが,日本で買うと大体1200円前後。タイだと599Bなので,2000円弱します。
このように,日本より物価の安いタイで何も日本より高くつくワインを買うこともないなぁ,と今日も帰りかけようとしたその時。目に飛び込んできたのがこちらです。
フランスワインですが,何と表示が299B(≒¥956)!
思わず二度見してしまいました。
だってこのお値段ですよ?
ニューアイテムとあるので,新商品のプロモーションでしょうか。
ラベルには『Knight Black Hose,Red Wine, Cabernet Sauvignon』
とあります。
このラベル表記にちょっとした違和感を感じますが(その理由は後ほど),それにしても安い。見知らぬワイナリーのワインですが,フランスにはそれこそ小さなセラーが山のようにあるので,見たこともないワインに出会うのもしょっちゅうです。
どれどれ,どんなワイナリーなのかしら,と手元のスマホで調べてみると,驚愕の事実が。
タイの衝撃のワイン事情
何とこのナイトブラックホースというのはタイのワイナリーだったんです!
ガンガンと頭を打ちつけられたかのような衝撃。
まず第一に,タイでワインを生産しているという驚きの事実です。
「日本エスニック協会」のHPにこんな記述がありました(以下引用です)。
まだ日本ではなじみの少ないタイ産ワインですが、近年話題の「新緯度帯ワイン」のひとつとして、オランダやデンマーク産のものと並び世界の注目を集めているのをご存知ですか? 熱帯の国のイメージが強いタイですが、いわゆる“避暑地”のような地域はワイン作りに適した温度差があり、ここ十数年で急速にワイン作りが盛んになっているのです。とくに世界自然遺産でもある国立公園を有するカオヤイは、タイ国内でもワイン作りが盛んな地域。山々に囲まれた恵まれた自然環境と程よい温度差がぶどう作りとワインの醸造に適していることから、いくつかの有名なワイナリーがこの地に居を構えています。(http://ethnic-as.net/selection/gourmet/196/)
これは全く私の勉強不足でした。タイでもちゃんとワインを作っているんですね。
日本では見たことがなかったので,全く知りませんでした。
これでラベルの違和感にも納得がいきます。
フランスだとワインにわざわざ『Red Wine』なんて記しませんもんね。万一書くようなことがあっても,『Wine』ではなく『Vin(フランス語でワイン』と表示するはずです。
もう一つはカベルネ・ソーヴィニヨンとぶどうの品種が書かれていたこと。これもフランスワインにはない習慣で,地区によって栽培されている葡萄が決まっているフランスでは,品種をわざわざ書くことはあまりないんです。一方,ニューワールドと呼ばれるチリやオーストラリアのワインラベルには分かりやすく,カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズなど,品種名が書かれています(上の2つのワインもそうですね)。
でも,どうしても解せないことがあります。
それが売り場に『フランスワイン』として並べてあったことです。
はっきりとしたことは分からないんですが自分なりに解釈した所によると,まず第一にラベルに「French Green Oak Medium」と書かれていることが原因かもしれません。
これはフランス産のオーク樽で熟成させたミディアムワインですよ,という意味なのですが,この字面だけで売り場担当者がフランスのワインと判断したのではないかと。
というのも,どうやらタイでもタイ産ワインの認知度は低く,しかも主に輸出用として生産されているため,タイ人の多くもタイでワインを作っていることを知らないみたいなんですね。それでフランス産ワインと勘違いしたのかもしれません。それにしても一般人ならともかく,スーパーの売場でこんなことが起きるのは日本では考えられないことですが,ここはタイ。さもありなんです。
でもせっかくなので,このタイのワインを一本買ってみることにしました。
このしっかりとしたボトルとラベル。見た目だと本当にフランスワインのようですよね。
裏にはしっかり「FRANCE」とシールされています。
100%不当表示,産地偽装になっちゃいますよね,これだと。
でも初めてのタイワイン,どんな味がするんでしょうか?楽しみです。
ということで,本日の晩ごはんです。
ワインに合わせた料理を並べてみました。
でもなにはともあれワインです。
色味は深い赤というよりもレンガ色。やや枯れたような面持ちです。香りも弱め。これはしまった,商品管理が悪くて駄目になってしまったのか,と不安を抱きつつ一口いただきます。
あれ,美味しい。
口に含むと酸味とともにしっかりとした果実感も感じられます。
暖かい土地で栽培されたカベルネ・ソーヴィニヨンなので,むせかえるような香りを予想していたんですが,香り自体は抑えめ。
渋みのもととなるタンニンもほとんど感じられません。代わりに落ち着いた,深みのある味わい。これは管理が悪かったのではなくて,ワインの熟成が進んで枯れたような色合いになっているんですね。ワインは熟成が進むにつれてタンニンが溶け,まろやかな香りと味わいになります。
このワインのビンテージ(生産年)は2012年。随分熟成が早いような気もしますが,年中暑いタイなので,もしかすると他の地域よりもワインのピークを迎えるのが早いのかもしれません。ギリギリのタイミングで飲み頃に間に合ったという感じです。これがあと1年遅かったらピークが過ぎて,駄目になっているかもしれません。
それにしても値段を考えるといいですね,タイワイン。
希少性もあってこれから日本でも注目されるようになるかもしれません。
でもやはりワインの真骨頂は食事と合わせてのもの。
タイワインと料理の相性も確かめてみましょう。
まずはこちら。
バンコクBig Cの美味しいお惣菜 でもご紹介した,ジャーマン・ポーク・レッグです。
土地のワインは土地の料理と一緒に,というわけで,ナンプラーの唐辛子漬け,プリックナンプラーをかけていただきます。
酸味と辛味と魚の香りのするプリックナンプラーを使った豚肉料理。普通のワインであれば合うはずのない組み合わせですが,そこはタイワイン。少しスパイシーなタイのワインがプリックナンプラーをしっかりと受け止めてくれます。
ただ,合わなくはないんですが,無理して合わせる必要もないかな,というのが正直な印象。タイの白ワインだとまた違うかもしれません。今度確かめてみたいですね。
こちらはジャーマン・ポーク・レッグをワイン用にアレンジした料理。
フライパンにオリーブオイルをニンニクで香りを出した所に,豚肉を入れ,少し焦げ目が加わったところでトマトも投入。豚肉には味がついているので,追加のトマトの分の塩・コショウ,そして隠し味にお醤油を少し。生の醤油はワインと喧嘩しますが,火を通すととたんに仲良くなります。お試しあれ。
タイのワインにも合うだろうなと思って作ってみたんですが,やっぱりバッチリ合います。
トマトの酸味と豚肉の香り,そして醤油が生み出す味の深みがタイのワインともピッタリ。料理がワインの味をさらに引き立ててくれます。
でもその上を行ったのがこちら。
こっちは正真正銘のフランス産のブリーチーズ。
半分はそのままをカットして,もう半分はアルミホイルにくるんでオープンで焼きました。
ブリーチーズに火を入れると香りと味が深まってさらに美味しくなります。
とろりと溶けたブリーチーズを野菜スティックでいただくと,お手軽チーズフォンデュのようでもありますね。
チーズとワインの相性の良さは今さら言うまでもないことですが,タイのワインともしっかり合います。というかとても美味しい。チーズとワインをそれぞれ単体でいただくよりも何倍,何十倍と美味しく感じられます。
やっぱりタイで作られるワインもしっかりワインなんですね。
調べてみると,タイにはまだまだ色々なワインが眠っているようです。
ぜひこれからもちょくちょくタイのワインを試してみたいですね。
バンコクでの生活にさらに一つ楽しみが加わりました。
今日もごちそうさまでした。
【2019年5月追記】
タイのワイン問題を解決させる答えの1つがこちら。ぜひご覧ください。