(夕暮れの瀬戸大橋)
こんにちは、タイの晩ごはんです。
2日間にわたって行われた『香川うどんツアー』(初日の様子と二日目)ですが、旅の喜びは地元の美味しいものだけではなく、地元の美味しいお酒…そう、地酒。ですよね?
さぬきうどんを食べに食べまくった香川旅行ですが、もちろん美味しい地酒にも巡り会うことができました。
というよりも、素晴らしい酒屋さんに出会えたんですね。
まずはこちら。
観音寺市にある「おおにし酒みせ」さんです。
場所は観光名所の『銭形砂絵 寛永通宝』からほど近い、R237沿い。
ちょっと変わった店名と、素通りしてしまいそうな外観ですが、「凱陣」ののぼりを立てているのを見つけて入店してみました。
そしたらこれが大当たり!
店内のショーケースに『試飲できます』の張り紙を見つけたので、お店の若い方に聞いてみると、笑顔で応じてくれました。
しかも「どんなタイプのお酒がお好みですか?」とこちらの嗜好に合わせて、色々なお酒を出してくださるんです!
ちょちょちょ、それ商品でしょ?とこちらが慌てるほどの気前の良さ。
しかもこの日は友人たちと総勢8名での訪問だったんですが、運転手以外の皆に振る舞うばかりか、「いや~、やっぱり若い女性がこうやって日本酒を飲んでいる姿を見るのは良いもんですね」なんて言ってくれちゃったりして。
見た目はシュッとしたロン毛のお兄さんで、酒屋よりもオシャレなカフェで働いていそうな風貌なんですが、お酒に詳しい詳しい。
本当に日本酒が好きで、そして日本酒を扱うのが好きなんだな~と感心させられました。
その「おおにし酒みせ」さんで購入したのがこちら。
「日土人(ひとびと)」です。
このお酒は、日本名門酒会四国地区限定のオリジナル商品で、『日と土と人』というネーミングが表す通り、米作りから一貫して四国の地で多くの人の手間をかけながらつくられたお酒です。
実際にお酒を醸すのは高知県の司牡丹酒造さんで、香川のお酒ではないのですが、まあそこは同じ四国ということでご容赦ください。何しろ香川県には酒造メーカーが6軒しかない。酒豪の多い(褒め言葉)高知とは違うのですよ。
で、肝心のこのお酒ですが。
うまい!
口当たりは柔らかなんですが、純米酒らしいお米のボディがしっかりと感じられ、口の中に含むとかすかな酸味とともにお酒の旨味が口中に広がります。
味のバランスと完成度の高さに驚き、これで本当に¥1280?と二度びっくり。
しみじみ旨い。そんなお酒です。
もう一軒酒屋さんに行ってきたんです。
それがこちら。
高松市にある「ワタナベ酒店」さん。
場所はJR高松駅近く、住宅地の中にある酒屋さんです。
このワタナベ酒店さん、2年前のうどんツアーの時に伺ってから、香川来訪のときにはぜひまた行きたい!と念願のお店だったんです。
ここが素晴らしいのはやっぱり試飲!
飲ませてくれればなんでもいいんかい!とツッコまれそうですが、そもそも酒屋さんで商品であるお酒を試飲させてくれるってスゴくないですか?
香川で入った2件の酒屋で両方ともに試飲させてくれたので、もしや香川はそういう文化?とも思ったのですが、もちろんそういうことでもなく。
実は「おおにし酒みせ」の若主人(あのシュッとした人)と「ワタナベ酒店」の跡取りの間に親交があって、「おおにし酒みせ」さんの方が「ワタナベ酒店」さんを目指した店作りをしているそうなんです。
で、その「ワタナベ酒店」さん。
ここの試飲はすごいです。
こちらの好みを聞いて、出てくるお酒の数の多さもビックリなんですが、そのどれもが美味しい!
普通、ある程度の数のお酒を試飲すると、やっぱり中には「う~ん、これはちょっと…」というのもあるんですが、「ワタナベ酒店」が出してくれるお酒(つまり取り扱っている商品)は全部美味しいんですよ。
しかも、「ワタナベ酒店」は酒蔵と協力して出しているPB(プライベートブランド)のお酒が何種類もあって、ご主人へのお酒に対する熱い想いがビンビン伝わってきます。
とは言っても、「ワタナベ酒店」さんも「おおにし酒みせ」さんも、商品を売りつけてやる!という気配は全くなく、あくまでも自分たちが好きなお酒を一人でも多くの人に知ってもらいたい、飲んでもらいたい。という気持ちからやっているだけ(あくまで想像)なので、気持ちよく試飲できるんですよね。
その「ワタナベ酒店」さんで購入したのはこちら。
香川を代表する地酒といえばなんと言ってもこれでしょう。
「悦 凱陣(よろこび がいじん)純米吟醸 無濾過生」です。
『こんぴらさん』の愛称で有名な金比羅神社の近くにある丸尾本店さんが醸す凱陣は、日本酒好きには有名ですが生産数が限られているため、どこでも買えるお酒というわけではありません。
その凱陣は酒米の種類によってお酒の仕込み方を変え、お米本来の美味しさを最大限引き出すことをテーマにしているため、同じ「凱陣」でも複数のバリエーションを持ちます。
こちらのブルーボトルは酒米の中でも一番の勢力をもつ『山田錦』を100%用いた純米吟醸の無濾過生。つまりできたてのお酒をそのまんま瓶につめた一本ですね。
味わいは山田錦らしい、しっかりとした旨さと気品の高さを兼ね揃えた文句なしの美味しさ。
少し酸味も感じられますが、その酸味が全体の味を引き締めています。
日本酒はワインと違って、原材料であるお米の違いよりも、仕込み方で大きな味の差がでるものですが、そこをあえて酒米の特徴を引き出そうとする丸尾本店さんの心意気にはしびれますね。
「ワタナベ酒店」さんではもう一本購入しました。
それがこちら。
ワタナベ酒店PB商品「川鶴 オオセト特別純米原酒中取り」です。
大手バイヤーは別として、酒屋さんが出している日本酒のPB商品というのは、酒屋の主人が気に入って懇意にしている酒蔵に、こういったタイプのお酒を仕込んでほしいとお願いして醸ってもらったり、出来上がったお酒の一番いいところを特別に取り分けて商品化したものです。
このお酒は香川を代表する酒蔵、川鶴酒造さんが、同じく香川を代表する酒米『オオセト』で醸したお酒。
樽で仕込んだお酒は、絞る時に出てくるタイミングで味わいが異なります。
一番初めに出てくるお酒は『荒ばしり』と言って、香りが強く、若干荒々しい味わいになると言われています。
一方、一番最後に出てくるお酒は『責(せめ)』と言って度数が高く、パンチの効いた味わいが特徴です。
そして真ん中の部分が『中取り』もしくは『中汲み(なかぐみ)』と言われ、一番バランスがよく、味わいも良いとされています。
もちろん、そういった区別なく全部一緒にして商品化されている日本酒がほとんどではありますが、ワタナベ酒店PB商品の「川鶴 オオセト特別純米原酒中取り」は、その真中の部分だけを詰めた一本というわけですね。
そういうウンチクを別にしても、このお酒は本当に香りと味わいのバランスが良く、思わず「ホ~ッ」とため息が出てきそうな美味しさ。
メロンを思わせるかのような爽やかで華やかな香りと、『オオセト』の特徴だというしっかりとした旨味とコクとのバランスが素晴らしい。
これはやっぱり『中取り』の良さなのかもしれませんね。
漫画「夏子の酒」の中に、『和醸良酒』という言葉が出てきます。
「和は良酒を醸す」もしくは「良酒は和を醸す」という意味なんだそうです。
これまで色々な酒蔵や酒屋さんを訪ねたことがありますが、共通しているのは、美味しいお酒を作っている蔵や販売している酒屋さんは、どこもみんな「いい人」たちだ、ということです。
今回出会った香川の二軒の酒屋さんも、本当にお酒が好きで、自分と同じように美味しいお酒を味わってもらいたい、という純粋な気持ちが伝わってきました。
美味しいお酒を試飲させてもらって、よりお酒が好きになって、そしてまたこの店に足を運びたくなる。
そんな店と客との間の良い「和」が醸されているんじゃないでしょうか。
良い酒ある処に良い人あり。
そして良い人いる処に良い酒あり。
そのことを改めて実感できた香川の旅でした。
今日もごちそうさまでした。