こんにちは、タイの晩ごはんです。
一時帰国中の間、タイではなかなか気軽に呑めない日本酒を堪能していますが、とどめをさすのが今回紹介する「さいとう」です。
日本帰国の際には必ず立ち寄ってお酒を購入する「さいとう」。何がそんなにすごいのか?
満を持して、ご紹介したいと思います。
「さいとう」の場所
「さいとう」が店を構えるのは、千葉県船橋市。新京成線・三咲駅の北口を出て徒歩4分の場所にあります。
車でお越しの際には、店の裏手に広大な駐車場(空き地とも言う)も用意されているので、ご心配なく。
「さいとう」のここがすごい!
「さいとう」のすごいポイントの一つは、あの「田酒」のラインナップが豊富だということ。
今や入手困難で、目にすることも難しい田酒が様々ならんでいます。
しかも、これが全てではありません。
この日訪れた時には、店の中には田酒がケースで山積みになっていました。
す、すごい…。
聞けば、「さいとう」のご主人は田酒が今のように知られる前から気に入っていて、蔵元とも懇意にしているとか。
その関係性で、今でも取り寄せることができるそうです。
田酒好きはもちろん、噂は聞いたことあるけれど、まだ田酒って呑んだことがないな~という方は、ぜひ「さいとう」をお訪ねください!
「さいとう」の本当の凄さとは?!
田酒をこれだけの種類揃えているのは確かにすごいですが、それだけなら単に「田酒の品揃えが豊富な酒屋」にすぎません。
「さいとう」の本当の凄さはを知るために、こちらをご覧ください。
石川県白山市の酒蔵、吉田酒造店の「手取川 純米大吟醸」です。
ただ、この写真で「おや?」と思ったあなたは鋭い!
特に、ラベルの上に注目。
「さいとう」の手取川が、「さいとうオリジナル 花ごよみ」となっているのが分かるでしょう。
でも、さいとうオリジナルってどういうこと?
じつはこの「さいとう」、お酒の保管に並々ならぬ神経を注いでいるんです。
日本酒はできたてよりもある程度、時間を置いたほうがグッと味がのって美味しくなります。
新酒を寝かせて、ひと夏こさせたお酒を「ひやおろし」として楽しむのが一般的になってきたように、お酒を寝かせることによって味わいに変化が生まれます。
ただ、その保管状況がとても大切。
お酒の大敵となるのが、「光」と「振動」です。
光は暗いところに置けばよいのですが、振動はそうもいきません。
そこで「さいとう」は、なんとお店の地下を掘り抜いて空洞の空間を作り、それによってほんの僅かな振動をも抑えることに成功したのです。
地下室にワインセラーを作るのと同じ理屈ですね。
そうした徹底的な管理によって低温・長期熟成させたお酒は、元のお酒とは全く異なる味わいを獲得できるようになります。
特にこの手取川は「生酒」。
つまり、お酒の劣化を防ぐための「火入れ」を一度もしていないお酒ですから、管理には余計に気を使わなくてはいけません。
しかし、だからこそしっかりとした環境で熟成させることによって、お酒のポテンシャルを最大限に引き出すことができるのです。なにしろ、火入れをしていないのでまだ「生きて」いますからね。どんどん味わいが変化していくわけです。
そうしたお酒を、ここでは「さいとうオリジナル」として販売しているというわけ。
もちろん、これは蔵元のお墨付きです。
なにしろ、この「花ごよみ」は、手取川の酒蔵の人がわざわざ「さいとう」を訪れて購入するというから、恐れ入る。
…と能書きはここまでにして、では実際の「花ごよみ 手取川純米大吟醸」の味わいは?
グラスを口に近づけるだけで、芳香な香りがムワッと広がります。
口の中にお酒を運んであげると、さらに香りが強くなり、『お酒のようなもの』が喉元をすっと通り過ぎていく。
いや、もちろんお酒なんですよ?
ただ、この花ごよみはお酒の持つアルコールのキツさやクドさが全く感じられない。
ただただ美味しい、液体なんです。
まるで、ボルドーの素晴らしい最上の白ワインを飲んでいるかのような体験。
これはやばい。
口当たりがひたすらに優しく、甘みも感じられるのでスイスイと盃が空いていく。
気をつけていないと、一本くらい軽く飲み干しちゃうんじゃないの?という飲みやすさ。
もちろん、手取川自体も美味しいお酒なんですが、この花ごよみは手取川であって手取川ではない。
手取川を超えた、まさしく「さいとうオリジナル」のお酒へと『進化』してしまっているんです。
この花ごよみは手取川の純米大吟醸だけではなく純米酒もあって、実は自分は純米の花ごよみが大好きなのですが、この日は残念ながら品切れ。
1年以上寝かせてから販売するというスタイルのため、どうしてもこういうことはありうるんですよね。
代わりに、ご主人から「これも素晴らしいからぜひ飲んでみて!」と勧められたのがこちら。
田酒の季節限定酒、「古城の錦 純米吟醸」です。
古城の錦といえば、田酒好きでもなかなかお目にかかれない、貴重なお酒。
その特別な田酒を、「さいとう」でさらに保存・熟成させたのがこちらのお酒になります。
では、この「古城の錦」もいただいてみましょう。
まず、これは本当に日本酒なの?と思わせるような、むせ返るような香りがすごい。
そして口に含むと、甘みと酸味のダブルパンチを喰らいます。
田酒はもともと甘みと酸味のバランスが素晴らしいお酒ですが、この「さいとう」の古城の錦は、熟成によってさらに特徴がくっきりと際立っています。
まるで青りんごを思わせるようなフルーティーさとぶどうのような酸味、そして柔らかな甘みが口いっぱいに広がる。
そしてその古城の錦の素晴らしさが、熟成させることによってさらに奥行きがもたらせれているように感じます。
たしかに、これもすごい。
二本とも、あだやおろそかでは飲めない。本当に特別なお酒です。
いや、そもそも、「さいとう」に置いてあるお酒全てが特別なのでしょう。
お酒好きの店主が惚れ込んだ日本酒のみを集め、それを最高の環境で寝かせてあげることによって、そのお酒のポテンシャルを最高まで引き出す。
そこに傾けられた情熱は、まさに店主の日本酒への「愛」そのものなのでしょう。
実際に、「さいとう」のご主人と日本酒について話し始めると、とにかく話が終わらない!
お酒を買いに来ただけのはずなのに、購入自体が楽しみとなるような、そんな素敵なお店です。
日本帰国のたびに、味わうのを楽しみにしている「花ごよみ」。
「さいとう」のお酒は、ナンバーワンと言うよりも、まさしくオンリーワン!
ここに置いておけば、ビールさえも美味しくなるとはならないとか…。
そういう話が生まれちゃうほど、「さいとう」は特別な酒屋なのです。
人気が出すぎちゃって、次の帰国時に飲みたいお酒がなくなっていると困るので本当はあまり紹介したくなかったのですが、ぜひ皆さんにもこの味わいを知ってもらいたい。
少しばかり遠いとしても、わざわざ足を運ぶ価値は絶対にあります。
なにしろ「花ごよみ」を始めとして、文字通りここでしか買えないお酒が待っているのですから。
こちらは、実家に送った花ごよみと、田酒の山廃。
田酒の山廃の方は、自分もまだいただいておりません。
帰国の度の「さいとう」通いは、まだまだ続きそうです…。
今日もごちそうさまでした。